西の果てカシュガルへ行く2012(6)カシュガル 雪で空港閉鎖 極上の羊スープで温まる

杏ジャム工場

午後はジャム工場に行く。これまた広大な敷地だ。何でこんなに広い場所が必要なのだろうか。工場の建屋もいくつか見えるが、やはり新疆では土地が余っているのだろうか。ここは2001年に工場が作られた。中央の大企業、中糧集団に属するようだ。従業員は54人、平均年齢28歳とある。この広さで54人しか働いていない。どうなっているんだ。しかも我々が訪れた時、この敷地内に人の影は全くない。ようやく事務所から漢族の男性が二人出て来た。

話を聞いてまた驚いた。この工場は周辺で採れる杏を原料とした杏ジャムを生産しているが、杏が取れる時期は6月頃で、その時期40日程度でジャムを作り、後は使用していないとう言うではないか。生産したジャムは主にアメリカなどに輸出するとのことであるが、どうしてもっと生産しないのか、と問うと、一言「採算が合わない」。 1年中生産するには原料の杏を貯蔵する必要があり設備に金が掛かる。一方輸出先の需要はそこまで多くはなく、かと言って国内需要などはあまりなく、売るのに苦労する。だが、ここの従業員はどうしているのだろうか。「その時期になったら北からやって来る」と。

ようは、この大集団は従業員を各工場で使い回しているようだ。こんなことが出来るのは漢族だから。従業員も恐らくは漢族で、会社の命でどこでも行き、稼いでいるのだろう。地元を大切にするウイグル族には出来そうもない。そういえば、この敷地も元はどこかの国営工場だろう。それを中糧集団が買い取って、資金効率だけを考えて運営している。ウイグル族に恩恵はない。

大宴会

夜は大宴会となった。明日カシュガルを離れる我々を送別するとして、J教授、S教授の友人、知人が三々五々集まって来て、席に着く。そして恩師の先生を中心に話の輪が咲く。

   

我々は本当にだしに使われているようだ。しかしそれでも良い、何か不思議な雰囲気、連帯感がそこにある。一人ずつ送別の辞を述べる。そうしてお互い抱きあい、強い酒を酌み交わす。実に熱い。

本日は厳しいウイグルの現状を色々と見て来た。だからこそ、この連帯がどれだけ重要か、支え合う必要性の意味を理解できる気がした。だが現実は甘くない。この優秀な人々が、真に笑顔で暮らせる環境は果たして出現するのか、酒をあおりながら考えたが、先は見えない。

2月15日(水)  (5)   5日目

大雪 空港閉鎖 チケット変更

カシュガル最終日。何となく名残惜しいが、こんなに長く一つの街に留まったのも珍しく、そろそろ体が次の街を目指している。先生達は今日はウルムチまで移動して泊まるが、私はカシュガル⇒ウルムチ⇒シンセン⇒香港の長旅となる。と思っているとメールが入ってきた。何と私が乗るはずの午前のウルムチ行き便は午後7時発となるとある。そうなるとウルムチでの乗り継ぎは不可能であり、早々に対策を迫られる。ホテルのロビーに降りていくと、まだ電気も点いていなくて(節電かもしれない)、フロントの女性に事情を話すが、「そんなの自分で電話しろ」といった雰囲気が漂う。

外へ出るとまた雪。しかも昨晩かなり降ったのか、相当積もっており、これによってカシュガル空港が閉鎖に追い込まれたようだ。N教授、J教授に知らせすると、彼らの午後便も夕方まで遅延とのこと。カシュガル空港の再開は午後3時以降らしい。ウルムチ行きに関しては遅延で腹をくくり、今晩はウルムチ泊まりとする。こちらはJ教授などもおり、安心。だが、今日のウルムチ⇒シンセン間のフライトを明日に変更しなければならない。これはどうすればよいのか。しかもこのチケット、香港の友人が代理で買ってくれており、フライト情報は全て彼の方に入る。そしてその彼は台北に出張中。絶望的な距離の隔たり、時間の隔たり。

仕方なく、自分でCAに電話してみる。案の定、電話は全く繋がらない。勿論このホットライン、カシュガルだけでなく、全中国共通だが、電話する人は無尽蔵にいそうで、また絶望感に囚われる。何回かトライするといきなり音声案内になる。先ず言語を選ぶ。中国語、英語、そして、何と4番目ぐらいに日本語、というではないか。思わずこれを押すと、あっと言う間に流暢な日本語で返事が来た。

後はスムーズだった。元々のチケットが格安だったため、明日のフライトに変更すると相当の追加料金が掛かることが分かる。だが先方からアドバイスがあり、明後日なら3000円ぐらいで変更できるという。その丁寧な対応に感激。おまけに変更後再度電話が鳴り、「実は先程の金額がもう少し安くなる。間違えて申しわけない」と。こんなサービス、中国にあったんだ、とこの時ばかりは日本的サービスにグッと来た。

大雪の中で飲む羊スープ

ホテルの部屋から下を見ると隣の学校の校庭も雪一色。子供達が楽しそうに雪遊びに興じていて、何だかホッとする。子供はどこでも子供だな。皆で街を散策する。雪はやんでいたが、足元はかなり滑りやすく、危険。レストランの前でもお店の前でも盛んに雪かきが行われている。カシュガルがこんな大雪になることは滅多になく、皆驚きながらも、ちょっと楽しげ。中国一大きいと言われた毛沢東像も雪に覆われ、雪かきが行われていた。

1軒の地元のレストランの前を通ると、中のダルマストーブの上にホーロー引きのカップが数個置かれて、コトコトと音を立てていた。瞬間的に「これは美味そう」と反応してしま、このスープを飲みたいと主張、聞き入れられて中へ入る。ホーローカップはかなり使いこまれていて、それだけで美味しいと確信できた。地元の人も飲んでいる。ナンも頼む。カップの中には大きな羊肉の塊が入っており、またニンジンや玉ねぎなど野菜もドンドンと入っている。

実に腹に沁みるスープだった。外が寒い分、美味しく感じられるのかもしれないが、やはり羊の味がしみ込んでおり、極上スープが出来ている。カップにスプーンを入れて飲んでいると「違う、違う」と言われ、もう一つの椀にスープを注ぎ、ナンをちぎって入れ、一緒に食べる。至福の時が訪れた。フライトがディレーしていることなど忘れてしまった。





コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です