愛知、奈良お茶散歩2014(6)信楽 陶芸通訳に四苦八苦

3月6日(木)

6.信楽

陶芸通訳

翌朝ロビーに行くとTさんが迎えに来てくれた。チェックアウトして、荷物を車に積み込む。今日は滋賀県の信楽へ行く、らしい。今日はドイツからお茶の研修に来たマリアのために、Tさんが信楽の陶芸家の所へ彼女を連れて行く、それに同行させてもらうことにしたのだ。

 

マリアも車に乗り、出発。天気は曇り。彼女のご機嫌も曇りがち。疲れているのか、あまり話をしない。信楽と言えば、狸の置き物ぐらいしか思いつかないし、大体どの辺にあるかのかも分からない。ただただTさんの運転に乗っかっていく。小1時間も経たないうちに、それらしい雰囲気の場所にやってきた。信楽と言えば、信楽宮、奈良時代に聖武天皇によって造営された離宮、紫香楽宮とも書く。実に古い歴史を持つ地域で、良質の土があることから、陶芸の里として、有名となっていったらしい。

 

小雨が降り出した、と思ったら、小雪に変わる。とても寂しい感じの場所に、いくつもの工房が見える。その中の一軒に車は入っていく。工房のご主人とその息子さんが迎えてくれた。工房に入ると、Tさんが『あとで迎えに来る』と言って帰ってしまった。え、なにそれ?

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ここでマリアが轆轤を回し、陶芸の基礎を勉強すると聞いたのだが、マリアはそこに置かれている陶器を見て、興味津々。しかもこの道20年の息子さんが轆轤を回すとバンバン質問が飛び出した。ところが・・、陶芸家は英語もドイツ語も出来ず、マリアは日本語が出来ない。皆の注目が私の集まり、にわか通訳を引き受けざるを得なくなる。

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しかし、私には陶芸の知識はなく、それを英語で伝えるのは容易ではなかった。それでもマリアの質問は容赦なく繰り返され、私の説明に納得できないと、身振り手振りで伝え始める。そのエネルギーは、先ほど車の中で見た彼女ではなかった。彼女はベルリンで日本茶カフェの店長をやるらしい。その為に日本へきて、日本の茶について勉強しているそうだが、陶芸への関心も半端ない。その道50年のご主人の手さばきに感嘆の声を上げ、質問の拍車がかかる。奥さんが出してくれたお茶もお菓子にも目もくれない。

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そして約3時間、彼女の興味は尽きなかった。最後にようやく轆轤の前に座り、真似事程度に回すともう時間切れとなった。それにしても名人の手さばきは凄い。まるで手品のように一瞬にして手から形が生まれ、あっという間に湯飲みが出来る。外国人がこれを見たら、さぞや喜ぶことだろう。

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信楽でチーズフォンデュ

Tさんが奥さんと一緒に戻ってきた。ここからは第2部のスタートだ。料理研究家のT女史も東京から駆け付け、食事の用意が始まる。マリアがドイツから持ち込んだチーズをベースにフォンデュを作るらしい。マリアは何でもこだわりがあり、時間をかけて作業をしている。鍋もわざわざドイツから持ってきたとか。

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T夫人とここの奥さんも、フォンデュの具材となる物を沢山作る。野菜は勿論、関西らしくたこ焼きにチーズを付けて食べたりした。何とも楽しい食事会に参加した気分だ。前の工房は和風だが、奥の自宅は全く違うイメージで作られており、いい雰囲気の暖炉が設置されており、ヨーロッパ風。

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マリアは実はロシア人で、若い頃、ドイツへ移住したらしい。しかもロシアでは陸上選手で、短距離のオリンピック代表候補だったとの話もあり、興味深い。プロの陸上選手は正直その資質で決まるので、努力しても成れるものではない、という言葉は、陶芸の世界とも通じるのだろうか。

 

工房を失礼する頃には、雪はやみ、外は明るくなっていた。Tさんの車で宇治駅まで送ってもらったが、信楽から宇治は車でわずか20分、その近さに驚いた。そのまま京都駅でマリアと別れ、新幹線で東京に戻った。

 

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