ダージリンお茶散歩2011(9)ガントク 幻のシッキム王国へ

5.ガントク  とうとうシッキムへ入境

8時前に車に乗る。名残惜しいが、カリンポンを去る。ヒマラヤホテルも実に名残惜しい。特に何もない街でこれほど離れたくない気分になるのは珍しい。しかし今日は幻の王国、シッキムへ行くのだ、と自分を奮い立たせる。

カリンポンから少し行くと、道端に民族衣装の男性がいた。珍しいので写真に納める。レプチュー族の正装だそうだ。河が見えてくる。向こう側がシッキム。そしてとうとう橋を渡る。ここは車が混んでいる。渡り切るとその先にチェックポイントがあったが、そこを通り抜け、ツーリストロッジと書かれた建物へ。運転手は私のパスポートと入境証を持って、手続きに走る。ここはどうやら外国人やインド洋人などが来た時に使う待合室のイメージ。今回入境証はセットさんがダージリンでアレンジしてくれていたが、ここでも手続きできそうだった。

30分ほどで手続きが終了。車は出発したがすぐにガソリンスタンドへ。1リッター46rpだから、日本よりは安いが、この国の物価から考えて、非常に高い値段である。インドが石油の大口輸入国である現実を見る。

山道を登る。途中で、大きな工場建設現場に出くわす。聞けば、最近シッキムに投資ラッシュが起こっている。この地域は従来経済発展が遅れていたが、近隣諸国との関係などからインド政府もシッキムの開発に力を入れ始め、企業誘致に優遇策を講じている。5年間企業所得税免税、設備輸入の非課税などにより、発電所や化学工場の進出が起こり、建設ブームとなっている。確かに数か所で工事が行われており、なかなか活況であった。

結局入境手続きも入れて、4時間ほどでシッキムの中心とガントクへ至る。

ヒドゥン・フォレスト

運転手が今日のホテルを探している。しかしこの辺は街とは思われない。一体どこへ行こうとしているのか。ようやく見つけたホテル名はヒドゥン・フォレスト。如何にも隠された感じで見つかり難い。ここも傾斜地に建てられ、景色が売り物のようだが、生憎濃い霧が出て、眼前の視界を遮る。



ここまで私を運んできてくれた運転手と別れる。私はこのまま彼の車で行動したいとも考えたが、それは料金に含まれておらず、ガントクに2泊するとかなりの金が掛かるらしい。また今は旅行シーズンであり、彼には他にも仕事がある。名残は惜しいが慌ただしく帰って行った。

ホテルのダイニングに残された私におばさんが、紅茶を出してくれる。ウエルカムティー、言われたその紅茶は、冷めないように布巾が掛かっており、重厚なポットと相俟って、本当に熱い。相当に時間がたっても冷めていない紅茶が飲めた。何だは腹も減らない。

流石に毎日歩き回り疲れたので、部屋で休むことにした。テレビを点けると、色々なチャンネルが飛び込んできたが、その中にブータンテレビがあった。何を言っているのか分からないが、Liveと書かれた画面には、新国王とその妃が映っていた。国王の婚礼式典を生中継している。その後日本にもやって来てブームとなる二人、ブータン国内でもかなりの人気で迎えられている。それにしてもこの人たち、日本人に似ている。いや、今の日本人ではなく、昔の日本人に。

チャンネルを切り替えるとラグビーのワールドカップ準決勝が始まろうとしていた。ウエールズ対フランス。ラグビーを見るのは久しぶりだが、英連邦で見ると何だか厳かな気分になり、結局最後まで見てしまう。息の詰まるような熱戦、なかなか得点が入らず、シャンパンラグビーと言われるフランスは影を潜め、粘り強いウエールズに、根気よく対処していた。

試合が終わると一気に気が抜ける。外はここ数日晴れ間が無く、どんよりしている。このホテルの欠点はネットが繋がらないこと。正確にはホテルのダイニングにはWifiがあり、更にはホテルの業務用にはケーブルもあるのだが、何故か私のPCには繋がらない。仕方がなく、街へ行って見る。

ガントクの街

小雨が降っていた。ホテルの入り口から道端へ出て、車を探す。ちょうどタタの小型車インディカが頭にタクシーマークをつけてやって来た。どうやら乗合タクシーのようで先客がいたが、乗せてくれた。街まで急な登り道を30分も走る。25rp。私は何と不便な所に泊まっているのだろうか。

街は思ったよりかなり大きく、道幅も広い。如何にもチベット系の色をした建物が寄り添うようにぎっしり建てられている。土地が無いんだな。車も多く、駐車スペースは満員。人々の顔もやはり我々日本人とかなり近い。

先ずはインターネット接続が出来る場所を探す。篩が巨大な建物が斜面に建っている。中に入ると小さい店が並ぶ雑居ビル。直ぐにネットカフェ(PCがあるだけ)が見付かり、中へ。店員の若者は親切で、PC接続なども手伝ってくれた。すぐに繋がる。20rp。シッキムでネットを繋いで世界と交信していたら、河口慧海も驚くだろうな、大谷探検隊の人々も目を向くだろうな。

それから明日以降のスケジュールを決める。コルカタでセットさんがセットした旅程はここまで。明後日の昼過ぎの便に乗るため、ここからは自力でバグドグラ空港へ戻らなければならない。不安は地震の被害で道路が所々狭くなっていること。当日の朝早く車で出たとしても、万が一道路閉鎖などがあれば、乗り遅れる。それに宿泊しているホテルも不便だ。

旅行会社に入り、相談する。皆親切に教えてくれる。オジサンが言う、「金が無いならシェリングタクシーでシリグリへ行け。シリグリからバグドグラはすぐそこだ」と。シェリングタクシー、その響きに誘われて乗ることに決めた。ただ明日午前中、山の上のお寺に行くための車を確保する必要があった。それはホテルで予約することに。

夕飯も街で食べることに。雨がしとしと降っているので、適当に店に入る。ちょっとおしゃれなこの店、欧米人向けなのであろう。時間が早いので客はいない。例の肉まんを頼む。やはり美味しい。この辺りでは定番の食べ物であることが分かる。

ホテルに戻るのにさっきの小型タクシーを探す。しかしどの車も100rpだと言って譲らない。どうやら街に来ればお客が拾えるが、下に降りていくと誰もいないので、帰りの分も取られるらしい。それでも50rpのはず、と言うが、誰も聞く耳を持たない。そういう決まりなのだろう。仕方なく、乗り込み、雨の中、滑るように坂道を下りホテルに着いた。

誕生会

雨が降る中、ホテルに駆け込む。母屋の方ではなぜか沢山の人の気がする。入って行くと「Happy Birthday」の文字が見える。今日はこの家のお嬢ちゃんの誕生日会だったのだ。そういえば、今日の夕飯をここで食べるか、と聞かれた記憶がある。開店休業だったのだ。

私は明日のタクシーの予約を依頼しようとしたが、皆とても楽しそうに飲んだり食べたりしており、きっかけが掴めない。その内誰かが「あんたも一緒の食べてお祝いしましょう」というので、拒むこともできずに、食事の列に並び、カレーや肉を取る。既に満腹状態だが、これはやむを得ない。付き合いである。

お嬢ちゃんは今年5歳らしいが、かわいく着飾っており、おじいちゃん、おばあちゃんに囲まれている。テラスでは同じくらいの子供たちがはしゃぎまわっている。一角を見ると、プレゼントの山が見えた。ここでもやはり誕生会に呼ばれれば皆プレゼントを持ってやって来るらしい。素朴な場所ではあるが、どんどんそのプレゼントが高価になっているように見えて、ちょっと悲しい。

ようやくタクシーを頼んだが、1つのお寺に行くだけで800rp。かなり高いが仕方がない。誕生会は早々に切り上げて、部屋に帰る。既に日本を出てから10日以上、そろそろ疲れが溜まっているが、そんな時は返って眠れない。この地域の将来を少し頭に描きながらウトウトした。





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