『インドで呼吸し、考える2011』(17)デリー 日本企業の問題点とは

デリーのケンタッキーで
Nさんのお店を辞して、ホテルへ戻る。今度はリキシャーに乗り、黙ってメーターで行く。80rp。私は少しデリーに身構えていた。デリーはある意味では普通の都市になっていた。ホテル近くで降りる。コンノートプレースを歩く。

横断歩道を渡っていると「危ないぞ」と声を掛けてきた若者がいた。少し話していると、友人と称して、日本人から金を貰おうと言う輩だと気が付いた。かなりしつこかった。ようやく我を振り払うとまた別の人間がやって来る。皆が私に声を掛けて来る錯覚に陥る。必ず国籍を聞いてくるので思い付きで「香港から来た」というと、彼らの態度が全く違うものになったのには、驚いた。日本人は本当に御しやすいカモなのだ。

お腹が空いたのでどこかに入ろうとして、ケンタッキーの前で足が止まった。ラダックでは考えられないこのジャンクフードの店で。この店、なかなかハイカラなのである。マックカフェを模したケンタッキーカフェがあり、若者が楽しそうにおしゃべりしている。

しかし注文しようにもシステム的にずさんでなかなかオーダーを聞いてもらえない。順番を無視する客についに声を荒げてしまう。ラダックの魔法はここで解けてしまったようだ。ようやく席について周囲を見ると、デートに使っているカップルが多い。隣は韓国人と日本人、そして西洋人が怠惰な姿勢でだらだら話している。これはインドか??

ホテルの周囲を歩いてみたが、近代的なビルが立ち並び、地下鉄もあり、車も多い。人がインド人であることを除けば、ここはインドか、首を傾げるほど、私の想像していた街とは異なっている。

インド人が指摘する日本企業の問題点
夜はデリーの大学教授M先生のお話を伺った。M先生は日本語の教師と言うことで紹介を受けていたが、お会いしてみると、日本語は実に堪能であり、かつ専攻は近代日本史、特に明治末の思想。また最近に日本企業のグローバル化を研究しているとのこと。

昨日日本から戻ったばかりだとは聞いていたが、某大学に客員教授として呼ばれ、何と2か月半も日本に滞在していた。何という偶然か、まさにドンピシャなタイミングでお会いできたわけだ。しかもわざわざホテルまで迎えに来てくれ、そしてご自宅に招いてくれた。

以下M先生の言葉。
「日本企業のトップは分かっているが、下が着いて行かない」
「雇用を維持して日本の技術の良さを出すためには、日本国内で薄利多売生産しかない」「日本人は日本が必ず再生すると信じている。しかし誰がやるかは明確ではない」
「あと10年すれば日本の技術の優位性はなくなる。その時中国・韓国には勝てない」
「タタの会長は来年引退。海外利益が65%の企業グループ、当然次期会長は海外から招へい。現在今後20年できる人を募集中。日系企業は・・」
「日本企業の研究拠点は本社中心。グローバル企業は世界の数拠点で並行して開発を行っており、ニーズの取り込みのスピードが違う」
「韓国企業は技術的に優れているとは思わないが、冷蔵庫、洗濯機のインド市場を独占した。日本企業に出来な訳はない」

至極もっともなお話ばかり。先生は日本滞在中に何度も企業経営者などを前に講演したと言うが、反応ははかばかしい物ではなかったらしい。「分かってはいるけれど、出来ない」ということが、日本には多過ぎると感じられた。

厳しい話ばかり書いてきたが、先生は実に温和な方で、話し方は上品。夕食も私の為に、奥様が家庭料理を作ってくれた。それにしてもインド人から「明治末の思想」「水平社」「幸徳秋水」などの言葉が出る度、正直唖然となる。今や日本人でこのあたりを語れる人はどれほどいるのだろうか。文化人と称している人でも難しいのではないだろうか。

そばでは先生の愛犬が常に吠えていた。2か月半も留守にして、更に今日もおれを構わないのか、といった不満が爆発していた。そういう意味では奥様や息子さんも同じだったはずで、その中を招いて頂いたことには実に感謝したい。

7月22日(金)
16.デリー2日目
地下鉄 
朝ホテルで朝食を取り、その足で地下鉄へ。デリーは2002年の開設以来、地下鉄の整備が進み、現在6路線が運行。街のかなりの部分がカバーされてきている。ただ外国人にはちと分かり難い。例えば私が泊まっているコンノートプレースは地下鉄名ではラジブチョックという名前であり、知らなければピンとこない。

今回初めてのデリーながら、「進化するデリーと進化しないデリー」をテーマに動いてみた。一番良いのは地下鉄に乗り、観光地や繁華街などいくつかの場所に行って見ることだと思い、実行する。

ラジブチョック駅はYMCAから徒歩5分ぐらい。地下に潜ると荷物検査があり、大勢の人々が足止めされる。そしてチケット売り場はかなりの混雑。私も観光地カールキラーに行くための路線を窓口で聞いたが、英語がよく分からず、窓口で時間をかなり使った。耳寄りの情報があった。それは3日間乗り放題のトラベルパスが300rp(50rpはデポジット)販売されており、いちいち行列しなくてよいこと。但し1回の料金は15-25rp程度。とても使い切れるものではない。結局余ることを覚悟の上で、購入。

因みに駅には飲み物などを売るキヨスク、書店、そしてCitibankのATMもあった。この辺は現代的で違和感はない。

ここの地下鉄は色で分けられている。私はイエローラインに乗り、チャンドニーチョックへ向かう。ここはデリー駅(ニューデリー駅とは別)であるが、駅名はチャンドニーチョック。何でだ?地下鉄の車両はきれいだが、混雑しており、中国同様?降りる人に譲る姿勢はない。インド人の風貌からして、どいてくれないと結構痺れ、怖い感じがする。これはやはり「他人に隙を見せない」ためであろうか。

この地下鉄、日本のODAで作られたと聞いていたが、車両は韓国製とか。車内には携帯やPC用の電源も備わっており、良い。が、いつも混んでいる車内で充電している人を見かけることはなかった。

 

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