中国鉄道縦断の旅2015(10)呼和浩特のクリスマスイブ

今日の列車は夜行で出発は夜の11時。時間はたっぷりあるので、バスで山西博物館へ行ってみた。今朝も通ったので地理は掴んでいた。黄河の支流、汾河が街の中を流れている。橋を渡りバスを降りて歩くと、その先に巨大な建物が見えた。それが博物館だった。入場は無料なのだが、チケットをもらう必要があり、大きく回っていく。

 

本当に大きな入り口を入り、見学がスタートした。我々の関心事は万里茶路で活躍した山西商人について。専門コーナーがあるのはさすが山西省だ。山西商人は清朝時代に主に、ロシア・モンゴル貿易を軸に活躍し、巨万の富を得た。商人ではあるが、ある意味では外交官でもあり、またある意味では金融業者でもあった。貿易には金が必要であり、決済できなければ成り立たない。

 

山西省、特に祈県は19世紀以降金融の中心であり、票号と呼ばれる送金為替業務を営む金融業者が中国全土に支店を持ち、その役割を担っていた。茶貿易は勿論茶葉の売買だが、それは金融でもあった。そんなことが詳しく説明された立派な展示があった。清末には日本にまで支店を出し、その貿易活動は広がっていたのだが、清朝の滅亡とともにその繁栄は消えて行った。

 

帰りは川沿いを歩いて行く。夕暮れはさほど寒さを感じない。慣れたのだろうか。ここでもマンションの建設が進んでいる。迎沢橋という名前の橋。毛沢東を迎えたのだろうか。寒くないと言っても川は凍っている。バイクに乗る人々は風除け+手袋のような布を前に、橋を走り抜けていく。

 

橋の先でバスに乗り、駅前まで戻ってみたが、寒いのでケンタッキーに入る。安くて休めると思ったのだが、ここのコーヒーは何と16元もした。最近はマックもそうだが、客単価をあげるため、付加価値のある?商品を投入している。店舗もそれなりにきれいで、Wi-Fiも繋がり、若者でにぎわっているが、おじさんの来るところではないように思う。

 

夕飯は北京火鍋となる。久しぶりに煙突から火が噴き出す火鍋に出会った。肉はちょっとで 野菜をタップリ食べた。火がすごく強くて熱い。満員の店内は暖かさに包まれる。だが外に出たとたん、その幸せは消え失せる。でも我々には行くところがない。仕方なく宿泊していたホテルのロビーで体を休める。10時には駅に向かう。

 

太原駅ではちょっとした不安があった。武漢で買った呼和浩特行の切符、駅員がパスポートナンバーではない番号を打ち込んでいた。もし番号が違うと言われた場合、果たしてこの駅で処理してもらえるのだろうか。この番号はミャンマービザの番号だったが、それを説明すれば分かってもらえるのか。もし買い直しとなった場合、切符は買えるのか、時間的に間に合うのか。

 

しかし全ては杞憂に終わる。係員は一瞥しただけで、駅に入れてしまった。これでチェックの意味があるのか、などと思うより、安堵した。外は寒いが室内は温かい。向こうの方を見ると何と給湯器の横にカップ麺専用テーブルが置かれており、夜中にもかかわらず大勢の人がカップ麺を食べている。これを宵夜というのだろうか。

 

硬臥の車両に乗り込むと3人とも下段であった。S氏は『以前中国の硬臥、特に下段の切符は買うのが大変だったが、今回は何でこんなに順調なんだろうか』とつぶやいている。今や飛行機もあり、高速鉄道もある。我々のような旅をする人は勿論少ないが、全体的に昔の列車旅が減っているのではないだろうか。

 

11:08に列車は太原駅を離れた。車内は明るかったが、すぐに消灯となる。すると大きないびきがいくつか聞こえてきた。それは眠れないほどすごかった。今回の一連の列車の旅で、中国人が太ったと感じると同時に、いびきが煩いとも感じる。これもまた経済発展の代償なのだろうか。色々と頭を巡らしているうちにいつしか自分も眠りに就く。

 

車内は暖房が効きすぎて暑いぐらいとなり、掛け布団を放り出す人、中には裸で寝る人もいる。夜が明けた頃、外を見ると雪が積もっている。呼和浩特は太原よりさらい寒いのだろう。 朝飯を10元で売りに来たが、食べる元気はなかった。ただただ外を眺めて、今回の旅の辛さを思い出す。でもまだこれで終わりではない。

 

8. 呼和浩特
1224日(木)

8:58呼和浩特東駅に着いた。ここも大きな駅だが、周囲は建物が少ない。まずは呼和浩特駅へ移動。無料バスがあるというので乗ってみたが、満員の上、市政府前までしか行かない。2番バスに乗り換えて駅前へ向かう。1元。呼和浩特には何度か来ており、土地勘はある。当たり前だが相当に寒い。小雪も舞い始める。車内も寒く、心が沈んでいく。

 

駅周辺でホテルを探す、ということはしない。まずは呼和浩特駅に入り、北京行き列車の切符を買う。いい時間の列車があっさり購入できて驚き。これで呼和浩特も1泊だけと決まる。それからホテルを探す。ホテル王府は200元の3人部屋。かなり古い感じだが、エアコンがあり、何とか寒さはしのげそうだ。ホテルでチェックインの時、プレゼントが渡される。開けてみるとリンゴが1つ入っていた。気が付けば今日はクリスマスイブ。中国でもクリスマスが定着しているのだろうか。それにしてもリンゴ1つとは面白い。

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