福建・広東 大茶旅2016(8)秋茶はなしだ

1011日(火)
茶摘み

今朝は小雨が降っている。張さんは『50年以上茶作りしているが、こんな秋は初めてだ』とこの異常気象を嘆く。そして『こんな状態で茶を作ってもいい物はできない。今年は秋茶はなしだ』と言い放つ。えー、とこちらも返すと『その代わりにもし雨が止んだら少しだけ茶葉を摘み、製茶しよう。商品にはならないけどな』と笑う。

 

朝ご飯が地瓜粥になった。そして野菜も付いた。これは私が昨日余計なことを言ったからだろう。居候、ですらない、私に気を使ってくれるとは何とも有り難い。そういえば、安飛からも張さんからも『この春、お前の友達が来たから泊めてやったよ』と言われて、戸惑う。私は友達など紹介した覚えはない。高さんに聞くと、『昔の勤め先のHさんだよ』と言われて驚く。Hさんとは会社を辞めて以来、一度も交流などない。それが何で?

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『香港の店に何度か来たから、あなたの友達ということで、皆一生懸命やったんだよ』というので、申し訳ないとしか言いようがない。確かに彼は高さんの店のお客さんだったし、私の知り合いではあるが、なぜ張さんや高さんがそんなに良くしてくれるのか、を知らないのだろう。安飛など態々厦門のホテルまで彼を迎えに行ったというから、何と言えばよいのか。皆怪訝な顔をしている。

 

雨が上がった。我々は家を飛び出した。近くの茶畑は既に茶の芽がかなり伸び、葉が輝いていた。だが雨露に濡れた茶葉では良い茶はできないと何度も聞いている。それでも我々4人は黙々と茶葉を摘んだ。そしてその茶葉を製茶場に持ち込み、Tさんに製茶工程を一通り見せてくれた。最後にいつものように、茶を淹れて飲む。ここで飲むお茶が最高に美味い。それだけは実感できた。

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昼になると、ご飯の時間だ、と気の抜けたように言って家に戻る。張さんはこの秋、本当に茶作りをする気はもうないようだ。まあ、それがよいかもしれない。最近できた孫が可愛くて仕方がない様子。これからは自分が飲むためのお茶だけを作ればそれでよい。この異常気象により、一時代が終わったような気分になる。

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午後は街を散策した。宿のすぐ裏には樹齢何百年という大木があったが、雷にでも打たれたのか、その樹皮は焼け焦げていた。何だか村の呪い、のようなものが感じられ、早々退散した。夜もまた張家で食べる。今晩が最後になる。食後高さんと張さんの奥さんと夜の街を散策する。この街には取り立てて何もない。見るものもないので、我々の宿を見学するという。私が張家から宿に戻る道以外は分らないというと、『私はよくわかっている』と張さんの奥さんが言う。

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暗い夜道の中、確かに彼女は寸分の狂いもなく宿に辿り着いた。『私の実家のすぐ近くなのよ』というではないか。そして宿の門を入ると、例の西坪の王さんの親戚であるオーナーに向かい『あんたがやってんの?』というではないか。お互い、顔見知り、というか、この辺の人々は皆どこかで繋がっているのだ。香港の高さんなどは『このお兄さんには小さい頃遊んでもらった記憶がある』というのだ。確かに同じ高という苗字なのである。そして『この人は若い頃は京劇をやってたのよ』ともいう。確かにオーナー高さんの顔立ちはどこか品があり、京劇役者の面影がある。

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その夜、この宿では若者たちが集まり、酒盛りをやっていた。我々にも参加しないか、と誘ってくれたが、疲れていたので断った。この静かな宿に、しばし音楽が響き渡った。私は眠れない、というより、すでに沢山寝てしまって、疲れだけが残っていた。すっきりしない滞在となってしまった。洗濯物もスッキリ乾かなかったが、何と管理人が、簡易乾燥機を持ち込んで乾かしてくれたので、こちらはすっきりした。何というアイデア商品だ。

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1012日(水)
厦門へ

翌朝、最後の朝ご飯を食べに、張家へ行く。Tさんは少し天気が持ち直したので、朝早くから歩き回っていた。宿に戻ると見知らぬ人がいた。話してみると、何と台湾人だった。しかも彼がこの宿の仕掛人だった。この宿は、大坪の若者たちの、街のために何かやりたいという希望と、この台湾人の田舎の良さを残したい、という思いから作られたらしい。資金は台湾人、若者、大学生ら数十人が出し合ったという。台湾人が来たから、昨晩皆が集まっていたという訳だ。現時点では何とも未完成の宿だが、これから良くなっていくかもしれない。

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香港の高さんも今日帰るというので、その車に便乗して山を下りることにしていた。だが約束の9時半になっても車が来ない。我々は良いが、高さんは既に高速鉄道の予約をしているので、時間が心配になった頃、ようやく現れる。この街で商売している人が厦門へ行くので、その車、BMWに乗せて行ってもらう。大量の荷物と後ろ3人はギューギュー状態だった。実は昨年開通した路線バスは、最近の台風の影響で走っていなかったのだ。確かに途中に道路工事の場所があったが、普通の車は何とか通れ、下へ降りて行った。

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