福建・広東 大茶旅2016(5)安渓西坪は鉄観音茶発祥の地

西坪へ

それから市場の外を少し散策した。どこの茶荘も枝取り作業に大忙しで、小学生や中学生も国慶節休みにこの作業に駆り出されている。小学生に聞くと『枝取りは大嫌い』と言いながらも、手を動かしている。皆が休みでどこかへ旅行にでも言っている時期に、家の手伝いとはさぞ辛いだろう。でもそれがカメラマンにとっては、とても良い風景になるのだ。

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市場の向こうには川が流れている。結構大きい。ちょうどモーター船が音を立てて近づいてくる。往時、鉄観音茶はこの川を下り、厦門へ運ばれていたのだな、とその余韻に浸った。だが後で聞いてみると、この川は水深が浅く、茶葉の運搬には使われなかったらしい。基本は陸路だそうだ。

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王さんが茶都へ迎えに来てくれた。宿に荷物を取りに行き、ついに茶産地へ向かう。安渓西坪、と言えば、鉄観音茶の故郷。初めて足を踏み入れる喜びが沸いてくる。安渓の街から30分ほどで西坪に到着する。まずは観光用に建てられた記念碑の写真を撮る。『鉄観音茶発源地』だ。

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それから西坪の街に入る。文革時代からあまり変化していないのではないかと思われ、古き良き雰囲気が随所に残っていて好ましい。80年代まではここに茶葉市場があり、活発な茶葉取引が行われていたが、茶都が出来るなど、徐々に安渓に移ってしまったという。茶葉市場は今や野菜市場に代わっている。道には『茶葉市場』という表記があるのが、何となく名残だ。

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昔は茶葉の輸出を執り行う中茶の支店もここにあった。往時、茶葉の買付は西坪が中心だった。茶葉の多くは香港をはじめ、東南アジアや日本へも輸出されていた。近くの茶荘でちょうど子供が枝取りをしていたその台に使っていたのは、当時茶葉を輸出為に使った茶箱だったのがそれをさりげなく証明していた。

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昼ごはんはここで食べた。沙茶麺、この沙茶を現地語でサーデー、と読む。マレーシアあたりにあるサテーから来ているという。味もピーナッツ風味で、そのような味がする。マレーシアやインドネシアへ移住した華僑はここ安渓からも沢山出た。彼らが後に持ち帰った味というがどうだろうか。具は揚げ豆腐、豚もつ、肉、油条に魚のつみれなどを個別に頼むのだが、王さんが店に全部載せを注文してくれたので、碗に一杯になる。

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因みに私は一番関心を持ったのは、その美味しさではなく、茶を閩南語でデーと発音すること。勿論は発音は知っていたが、それを目で感じることができるのは幸いだ。ティーの語源はこの閩南語であり、広東語のチャと共に、世界を二分したとすれば誠に面白い。Tさんからも『ティーの語源をビジュアルに撮れるものを』と注文を受けていたので、これがピッタリな気がした。

 

西坪には、先ほどの記念碑は別として、鉄観音茶の母樹とその記念碑があるという。山の中で王さんが車を停めた。そして山の上を指して、ここを登れ、というので、Tさんと王さんのアシスタントの女性と3人で登った。だが上には廟があり、更にその上の険しい藪の中には鉄観音と彫られた岩を見つけたが、茶樹はなかった。王さんに電話すると『茶樹は下だ』というので驚く。

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まずは廟に挨拶してから入るのが礼儀のようだが、かなり疲れた。更に今度は下に向かって山道をかなり降りた。本当にこんなところに何かあるのかというところまで来て、やっと記念碑と茶樹を発見。まあ、ここまで来るのはよほどのお茶好きだけだろうな。最近はトレッキングもブームのようだから、意外とニーズはあるのかもしれない。ちょうど雨が降り出し、急いで車に戻る。

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梅記

今日の目的地、梅記の茶工場がある、南岩村へ着いた。何とも言えない田舎だが、こんなところが今や望ましい場所だ。その中にかなり大きな工場があるので目を惹く。更に家はかなり立派な4階建て。我々はここの4階に新しく作られたゲストルームに泊めてもらった。何ともきれいな部屋で驚く。

 

早々にお茶を頂く。相当に古い老鉄観音茶が沢山その辺に転がっていて、目移りする。非常に濃厚な香りと味わいがあり、私の好みである。棚にあった紙に包まれた茶、南厳鉄観音という文字を見て、思わず懐かしくなる。昔香港の茶荘には、この名称のお茶があり、その味わいが、今日飲んだ味にかなり近かった。ここにあるお茶も昔は香港に輸出するためのものだったのだろう。文字も繁体字だ。

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この家には一体何人住んでいるのだろうか。夕方、皆が集まり出し、食事の準備が始まる。何とも言えない昔風の料理。地元の野菜やキノコが使われ、自家製豆腐が登場する。外は雨が降り、ちょっと冷えるというので、体を温める料理になっているようだ。有り難く頂く。大勢で食べる食事はまた格別だ。子供はその辺を走り回り、おじさんは立ってご飯をかき込む。農家の食事。実は小学生は街の学校に行っており、週末に帰省していたのだ。僅かの間、親に甘え、自宅を満喫している様子は微笑ましくもあり、また何となく物悲しくもある。

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夜は製茶作業の見学。今日摘んだ茶葉が萎凋されていた。王さんのおじさんに当たる5代目、そしてその息子の6代目が製茶を担っている。王さんの役目は厦門での販売だった。茶葉を揺青の機械に入れて、揺らしている。5代目が『昔はこうやったんだ』と言いながら、天井から吊るされた綱に笊を結わえて、茶葉を入れて揺すって見せてくれた。今ではもうできる人もいないという、大変な作業だった。夜が更けるまでまたお茶を飲み、ぐっすり休んだ。

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