茶旅の原点 福建2016(13)観光地でない星村の良さ

51日(日)
再び星村へ

ついに行くところが無くなった。天気も曇りがちだ。こんな日は休めばよいのだが、明日には武夷山を離れると思うと、何となく外へ出たい気分になる。昼前には宿から出て行く。まずは腹ごしらえ。いわゆる自助餐のようなところがあり、安く食事ができた。この宿の近辺はやはり庶民、そして学生のための安い食堂が多いので本当に助かる。スープの代わりに、薄い粥が付いてくるので、これもまた有り難い。

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結局バスで星村へ向かう。もうバスの乗り方にも慣れ、どれに乗ればよいかすぐに分かるほどになっていた。星村は数日前に李院長に連れて行ってもらったので、土地勘もある。バスの終点の1つ前で降りる。何となく歩きたい気分になっている。古い茶工場も見えてくる。前回は車でさっと見ただけだから、今回はゆっくり徘徊する。星村の街はそれなりの規模であった。昔は茶葉貿易で栄えたのだろうか。250年という古い木が残っていた。

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ある一角は映画のセットになりそうなほど、古き良き風景を残していた。そこだけが時間が止まったような静けさで、かなり古い木造の家が狭い路地に並んでいる。老人が竹で籠を編んでいる。全てが手作業だった。ここには観光客も入ってきていない。もし観光客が沢山いたら、この雰囲気は保てない。基本的に昔ながらの生活をする人がいる場所だから、保存できるのだと感じる。向こうに教会の十字架が見える。この辺も早くから宣教師が入っていたのだろうか。田舎で昔栄えていた場所には大抵教会がある。

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急に私の横を通り過ぎたバイクが倒れた。それほどスピードは出ていなかったが、運転していたお母さんはバイクに足が絡まり、痛そうだった。後ろに乗っていた女の子は、振り落とされたが意外と平気だった。田舎のバイクの二人乗り、気を付けないと。もし私が振り落とされたら、今や受け身も取れず、骨の一本は確実に折れているだろう。道も平らではない。横には小川が流れている。この辺も茶葉が運ばれたルートかな。

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更に進むと、もう少し時代が下った建物がある。人民公社という文字が入っていたり、中外合資の賓館などという看板もある。80年代はまだ茶葉産業に活気があったのだろうか。15年前に訪ねた武夷岩茶研究所の建物が木に覆われて建っていた。九曲の船着き場、川辺まで下りてみる。あの竹筏に乗り込む観光客が沢山見える。往時はここから茶葉が運び出されたのだろう。今は人が運ばれていく。

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橋の脇には古めかしい建物があった。今は別荘のようになっているが、古めかしく作られたものだろう。今一つ行ってみたという気が起こらない。橋の袂を見ると、窯跡という表示があるから、元は窯に関係していたのかもしれない。船着き場近くは51の連休で観光客が沢山いた。茶葉貿易での賑わいと観光客の賑わい、あの商売に熱気とはかなり違う何かがある。近づき難い。

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観光客を避けてバスターミナルからバスに乗り、そそくさと退散した。バスは休日だからか頻繁に出ており、すぐに乗れた。既に馴染んだ、川沿いの道を走り、武夷山莊の近所を通り、昨日の正山堂の店付近、景区の入り口も通り、宿へ戻った。恐らくこれだけ長い間一度に武夷山にいた、しかもすることがなかった日本人は少ないのではないだろうか。自分でもまさか1週間もいるとは思ってみなかったが、それはそれで貴重な体験を数多くした。

 

宿に戻るとさすがに疲れ果て、眠ってしまった。夜また定食屋で食事を取り、シャワーを浴びて寝る。このルーティン化した生活が心地よくなってきている。私は旅から旅と移動を続け過ぎているのだろうか。もう少し一か所に留まり、その街をよく見極め、楽しさを探す、そういったことも必要かと思うようになった。それもこの旅の成果の1つだろう。それは沢木耕太郎の世界か。

 

52日(月)
河口へ

翌朝は起き上がれず、遅くまで寝ていた。武夷山を去るのが寂しいようでもあり、また次の旅への期待もあるのだろうが、なぜか体が重い。少し風邪気味かもしれない。武夷山は天気の良い日もあったが、曇りや小雨もあり、意外や夜は涼しかったから、体に堪えたかも。取り敢えず、昼ご飯を食べ、1週間お世話になった宿をチェックアウトした。午後、魏さんたちとの待ち合わせ場所である、高速鉄道の駅へ向かう。宿の近くからバスが出ているが、なかなか来ない。タクシーが来たので聞いてみたが、40元だという。どう見ても観光地料金であり、断る。

 

何とかバスが来て狭い車内に荷物を持ちこみ、乗る。バスは市内を抜けて、かなりの距離を行く。何もないところに作られた武夷山北駅に着いたのは30分後だった。魏さんと林さんが高鉄に乗ってやってくるが、武夷山で私を拾い、車で別の場所へ行くという。『武夷山は福建省にもあるが、江西省にもある』という言葉が引っかかっていた。江西省の武夷山、それは一体どんなところなのだろうか。興味津々。魏さんたちが着く前に迎えの車の運転手と連絡を取り合い、落ち合った。ここからさらに1時間半以上乗っていくと言う。魏さんたちも予定通り到着し、出発。

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